エロいい話①

December.13.2010

もっと!
全然足りないわ!
もっとよ!
もっとちょうだい!

俺は女の言うがままに尻を叩いたんだよ。
がむしゃらに。
ただがむしゃらに叩いたんだ。
俗にいうスパンキングってやつよ。
そうそう、あの叩くやつ。

そりゃ「尻叩いてくれ」なんて急に言われ、最初は面食らったよ。
だって、どれぐらいの強さで叩いていいのかないんで分からないじゃん?

だから最初は加減していたんだけど「もっと!もっと!」なんて女が言うもんだから俺も、女に求められるままに、徐々に強くしていったんだよ。

そしたら女の尻は見る見る赤くなっていくんだ。
「あぁ、こりゃ痛そうだな」なんて思ってたんだけど、これが女がまだまだ満足しないんだ。

あんたってばそんなもん?
もっとちょうだい!

もっとちょうだいったって、限度ってもんがあるよ。
これ以上強く叩いていいのかな?とかさ
何が足りないのだろうか?とかさ
だんだんエロい気持ちなんて薄まっていっちゃってさ。
そしたら女が言うの。

スナップよ!
スナップを利かすの!

スナップだってよ?
確かに俺は力任せに女の尻を叩いていただけだったんだよ。
なるほど、スナップか。
ムチの要領だな。

俺は手首にスナップを利かせ、再び女の尻を叩いた。
そしたらよ

パシンッ!

ホテルの室内に、響きわたる高音。
音が違うんだよ。

そう!
それよ!
そのスナップよ!
もっとちょうだい!

なるほど。
この音が欲しかったのか。

確かに、今まで俺が叩いていたのは、ベチッ!ベチッ!という鈍い音だったんだ。
スナップを利かせればこんな音がするのか。
セックスは五感でするっつーけど、あれはホントだな。
だって、女のノリ方が違うんだもん。

パシンッ!
パシンッ!
パシンッ!

白球がキャッチャーのミットに収まるかのごとく耳触りのいい音。
まぁ、何とも心地良いんだよ。

で、その時、気づいたわけ。
あれ?
このスナップ・・・どこかで使ったことがあるぞって。
どこだ?
どこだっけ?

ハッとしたよ。

スパンキングの手も止まっちゃって。
女がこっち向いて言うのよ。

気づいたようね。

だって。

微笑みながらさ。
すべてを見透かしたマリア様みてぇな顔だよ。

そうだ。
これだ・・・。
俺が無くしていたのはこのスナップだったんだ。

***************

あの試合からもう1年か。
9回の裏、クローザーとしてマウンドにあがった俺は、あの頃、「ハマの女子アナ」って呼ばれてたっけ?
なんでそう呼ばれてたかってのは、アレだよ。
ほら、女子アナって、庶民的な顔して、結局アレじゃん。
すげぇやつと結婚するわけじゃん。
そしたらやる気なくなっちゃうだろ。
そういうことよ。
相手チームは俺が出てくるとやる気なくなっちゃうってわけよ。
まぁ、これ、全然浸透しなかったわけなんだけど、そんなことはどうだっていいのよ。

2アウトをとって、あと一人になった時だったっけ。
なーんか違和感を感じたんだよな。

あれ?
どうやって投げるんだっけ?

「イップス」ってやつらしいんだ。
今まで普通にできてたことが、突然できなくなるんだよ。

ゴルファーなんかに多いらしいんだよな。
ほんの30センチのパットの打ち方が分からなくなるっつーんだから。
怖いよね。
で、体が動かなくなっちゃうの。

俺もそれよ。
もちろん病院にも行ったよ。
ただ、ダメだったんだ。
何をやってもあの時無くした何かは見つからなかったんだ。

*****************

俺があの時無くした物は、このスナップだったんだな。

優勝をきめたお立ち台の上にいる俺にインタビュアーが聞いてきたんだ。

この喜びを誰に伝えたいですか?

迷わず答えたよ。

「五反田の路地裏で拾ったうっすらヒゲの生えた女です」ってね。

ありがとう。
あの時の女。
ありがとう。

ただ、感謝したかったんだ。

俺は、自分が復活したいきさつを、このお立ち台の上ですべて話したんだ。
そして、どうか名乗り出てきてくれと懇願したんだよ。

どうしても感謝したかったんだ。

もう分ったろ?

それが今のカミさんってわけ。

野球?
永久追放だってよ。

そりゃそうだよな。
全国ネットのお立ち台でスパンキングの話しちゃってんだもん。

でもよ、俺は後悔してないよ。
今じゃカミさんが俺の尻叩いて、俺も頑張ってるってわけだから。

じゃ、配達行ってくるよ。
この続きはまた今度な。

【終わり】


こんなもん書いてる場合じゃないんだよ。
台本書かなきゃいけないのに。

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